映画を作っています。監督・三島有紀子の公式ブログです。ここから、しなやかな、楽しい、いろんな広がりが見えてくるといいな、と、思っております。


by yukikomishimafilm
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魚屋のおにいさん

昔、会社に勤めていた頃、よく行っていた定食屋さんがあった。
そこは魚屋さんがやっている定食屋さんで、家族で切り盛りしていた。

ある夜、仕事の合間に その店で「おいしいおいしい」と焼き魚定食を食べていると

店のお兄さんが話しかけて来た。

「こんな仕事遅いと、結婚もできませんね」

私は、笑いながら「そうですよね〜」とがつがつ食べていた。

すると、「僕も結婚できないんですよ」と言うので
「なんでですか?」と無神経な質問を投げかけてしまったら

「うち、やっぱり みんなで店やってるでしょ。
だから店一緒にやってくれる人じゃないとだめなんですよ」
「え、そういうもんですか?やっぱりだめですか」
「だめですよ。自分はこの店大きくして行きたいし。
結構長くつきあった彼女いたんですけどね。結婚ってなると だめでした。
彼女は、ヘルパーさんになりたいって・・・・だから話し合って、・・・それで結婚あきらめました。好きだからって結婚できないんですよね」
と つぶやいた。
お兄さんは、少しあきらめたように笑って店の奥に入って行った。

ああ、「すごく好き」でも人生が交差しない事ってあるよなあ〜。

そんなことを思いながらもお味噌汁をおかわりした私に
店のお母さんが近づいて来て、
「魚屋もみんなでやったら楽しいよ」と微笑んで来た。
気がつくと店のお父さんもそのまたおばあちゃんまで
出て来て私の周りに座り 
「大家族は楽しいよ」
とあたたかい空気。いろんな話で盛り上がり1時間ほど話してしまった。
本当に明るくて元気でみんないい人だった。

「ごちそうさまでした」
そのお店を出て、はたと気がついた。

え? これって?
なんか、みんなで嫁さがしてる?
ちょっと候補に入ってた?笑。

そんなことを思いながら日々の忙しい日常に帰って行った。

そして、それからたぶん、7,8年たった今日。
その魚屋さんの前を通った。
お店の人が携帯をかけている。
すぐにわかった。
少し、あごのラインがまあるくなってたけど
あのお兄さんだった。

私は、そっと横を通り過ぎた。
そのとき、聞こえて来たのは

「ちゃんとメシ、くっとけよ。・・・・・ええからな」。

間違いなく、嫁さんへの電話である事がわかる。
そしてとても大切にしているのがわかる話し方だったのだ。

私は、すれ違って一人、微笑んだ。

なんだかとても うれしくて。

嫁さん、来たんだ。

よかったな。よかったな、よかったな。

あんなに落ち込んでたお兄さんに、春が来た。

桜も満開。
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by yukikomishimafilm | 2009-04-04 02:38 | 三島の幸せ(もの・こと・ひと)