映画を作っています。監督・三島有紀子の公式ブログです。ここから、しなやかな、楽しい、いろんな広がりが見えてくるといいな、と、思っております。


by yukikomishimafilm
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心に刺さった絵本のこと。

『「ひとりぽっちの」の会長にしてあげる。わたしは副会長ね』

そう言ったのは、映画「しあわせのパン」で撮影させてもらった
ツキウラにあるカフェの女性Nさんだった。
Nさんとは、撮影前から撮影中そしてその後もずっと友達でいてくれる
「ひとりぽっち」仲間である。
そのNさんが私にぴったりの絵本がある、とプレゼントしてくれたのが

ささきまきさんの『やっぱりおおかみ』

だった。


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「おおかみは もういないと みんな おもっていますが 
ほんとうは いっぴきだけ いきのこっていたのです 
(中略)
ひとりぽっちのオオカミは、なかまをさがして 
まいにち うろついています」。

じぶんに似た生き物を探してもいなくって、「け」と言ってはまた別の場所。
うさぎやブタやしかは、たくさん仲間が集まってずいぶんと楽しそう。
でも、オオカミはうさぎにもブタにもしかにもなれない。

…その絵本のプレゼントに思わず口元が緩んだ。
けど、何度か読んでいるうちに、気づいたのだ。

ぶたがたくさん集まったマーケットをのぞいたときの黒い影のような小さなオオカミ。
「あ、わたし、これ見たことがある」。

そして、先日実家に戻って父親の書斎にもぐりこんだ。
主であった父親を失った書斎はひっそりとしているのに、
生き物がそこここに埋もれているように思えた。
引き出しの中、本棚の隙間、木箱の奥、
誰とも似ていないまったくちがう生き物がきっとここには潜んでいる。
小さい頃、この部屋で、わたしはたった一人なんだと思っていた。
本だけに囲まれて、灯りがぼんやりとついたこの部屋に座ると、急に楽になったのを覚えている。
でもそれは、きっと、ひとりぽっちを受け入れたたくさんの生き物たちが潜んでいたからだ。

そして、
とうとう
見つけたのだ。

本棚の奥に。
『やっぱりおおかみ』。
わたしは、この本をちゃんと通過していた。

Nさんといる時間は、きっとこの書斎にいる感覚に近い。ひとりぽっちが集まっている。

絵本の最後にこう書いてあって、わたしはほくそ笑んだ。

「やっぱりおれはおおかみだもんな。
おおかみとして いきるしかないよ。
   け。
そう思うと 
なんだか ふしぎにゆかいな気持ちになって来ました。」
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by yukikomishimafilm | 2012-03-24 12:42 | 三島の幸せ(もの・こと・ひと)