
不意にとても美しく力強いお花が
届きました。
真っ白な薔薇、
中谷美紀さんは映画『繕い裁つ人』を一緒に作り上げました、まさに戦友です。
あと何度生まれ変わったらいい監督になれるんだろう、
そんなことを考えては、いつも自分の未熟さが恥ずかしくなります。
でも、結局映画を観たり、芝居を見たり、本を読んだりして過ごし、
作りたい映画の企画書や脚本を書くのです。
あなたに会いにいくのです。
だからこそ、あなたとご一緒に作品を作れていること、あなたに観てもらえていること、
を心から有り難く思います。
本当にありがとうございます。
これからも自分を信じずに、いや、さらに自分を信じずに、ただ、自分の中に生まれる葛藤には忠実に、作りたいなと。
これから、どんな時代になるかわからないなあとよく思うのです。
でも、先人の皆様が、何かしら突破口を見つけてきたように、
自分もどこかに突破口を見つけて、発信していける表現者でありたいなと思います。
映画の存在には、自分の存在にも、あなたが必要です。
今年も、どうぞよろしくお願いします。
三島有紀子

夜遅くに
インターホンがなり「宅急便です」と声が聞こえた。
え?こんな時間に?何かの勧誘かなにかだろうか。
ドア越しにおそるおそる
「…なかみはなんですか?」
「んー、お花のようです」
お花?お花。身に覚えがない。
「だ、だれからですか?」
と声を潜めて訊ねた。
「えーと、し、、しげ、、重松、、、清?、、、重松清さんからです」
慌ててドアを開けた。
「すみません、ありがとうございます。受け取ります!」
重松清さんから、お祝いのお花が届きました。
ありがとうございます。
映画『幼な子われらに生まれ』は、重松さんが1996年に書かれた小説が原作で、
脚本家の荒井晴彦さんが脚本を書いてくださいました。
重松さんが、21年前にこの作品を産んでくださらなければ
この映画も生まれていません。
ある特定の家族のお話ですが、今では、この家族が抱えることは、
今の日本で「父」「父性」「家族」を考える上で普遍的なものになるのではないか、と思いました。
離婚率や再婚率も増え、血のつながりの前に「自己」と「他者」の認識、そしてその「自己」と「他者」のつながりをどうしていくのか、見直す時期が来ていると感じたからです。
それぞれのキャラクターもとても魅力的な作品でした。
何より興味深かったのが、主人公がいろんな出来事や異質な人間=他者と出会うことで、
自らの本質が剥き出しにされていくことです。結局、生きていくというのはこういうことなんだと気づかせてくれました。
だから、どうしても映画にしたいと思いました。
映画が完成した試写後、重松清さんと顔を合わせたいような合わせたくないような…鼓動が高鳴りました。
が、重松さんの方からやってきてくださり、
「作品が喜んでます。ありがとう」と手を握ってくださったことが
どれだけ幸せでありがたかったことかしれません。
去られてから、なんだか、体中の力が抜けました。ホッとして、「よかった」と口元が緩んでいたと思います。
お花は、とても素敵な色の大輪でした。
このお花には、大きなものがこめられています。
ここからまた、いろいろがんばらないとあきませんね。
本当にありがとうございます。
